2015-09-07

『殺人鬼フジコの衝動』読書感想文【8/50】

本と流行語をこよなく愛するArimoです

ごきげんよう

先日、お隣さんから

「Arimoさんイヤミスって知ってます?」

と聞きなれないお言葉を伺いました。

世間一般では、広く浸透し始めた言葉なのかもしれませんが

ここ数年、いきものがかりを続けているArimoはちょっと世間に疎くなってるせいか知らなかったよ。

いわゆる

「嫌な気分になるミステリー」

略して

「イヤミス」というらしい。

嫌な気分と言っても、後味悪いけどクセになる!っていうやつらしいです。

「くさや」みたいなもんですね。


伊豆諸島出身








それで、くさや小説イヤミスとして名高い

「殺人鬼フジコの衝動」をお勧めいただきました。





 真梨と書いて「まり」と読む








ありがとう。

そして、

久しぶりに、読み終わった後、戻って読み返す部分があった!

これは、イニシエーションラブ以来のことですな。


まず、構造が凝ってます。

こーいうのは、だいたい中盤で、その後の展開が読めてきて

最後に「やっぱり」なって思って終わることが多いから

中盤からはついつい、やっつけ読みになるのだけど、

これは、割と終盤まで引きつけてくれる!


珍しい!!



さて、ネタバレしないように、感想を書くつもりですが、

けっこう本編に触れてしまうと思うので、読むつもりの人は

この先は小説を読んだ後に読むことをお勧めする。

もちろん、いつもどーりArimoの独断と偏見に満ちた

アレなので、

ちょ、、、ちょ 待てよっ










 
って思った人は、コメント欄で承ります。

そろそろ絡んでください



********

私、フジコ。

小学5年生よ。

なんだ小学生かって思ったでしょ。

女の世界は、小学校高学年から始まるのよ。

思春期まっただ中の女の世界ほど辛いものはないわ。

えっ 何が辛いって?

人間関係に決まってるでしょ?

あなた忘れちゃったの?

そうね、大人になると忘れちゃうわよね。

小学生の時なんて日が暮れるまで友達と遊んで、秘密基地つくって

楽しくやってたわ~って

それ、何かのドラマか映画の影響じゃない?

よく想い出してみてよ

教室の微妙な力関係と空気。

昨日まで仲良かった友達が今日には急に話さなくなったり、

一日でまるっきり変わっちゃう女子の勢力図とか

こどもこどもっていうけれど

こともほど、理性が欠けてて残酷な生き物ってないと思わない?

あ、、ごめん。本名を言ってなかったわね。

「森沢藤子」っていうの。

え、知らないって?

ほら、高津区の一家惨殺殺人事件の生き残りよ。

そう、有名でしょ

ほんと、いいかげんにしてよ。今でもまだ雑誌記者に追いかけられてるぐらいなんだから。

なに、それにしては明るいって?

明るくなんかないわよっ

でも、叔母さんが「早く忘れてしまいなさい」って。

まあ、早く忘れるにも、記憶があいまいで良く覚えてないんだけどね。

もちろん、私も無傷ではなかったし。

ショックで覚えてないって感じかな。

でも、そのことで周りの大人たちも優しくしてくれるし、

想い出したところで家族が戻ってくるわけじゃないし、

正直言ってロクな親じゃなかったら、

今の方がよっぽど、マシな生活してるから全然OKよ。

新しい生活になって、

新しい人生を歩むのよ私。
 
絶対にお母さんのようにはならない。

そう「薔薇色のお菓子のような」人生にしてみせるわ。


********

本作は少なくとも15人以上の人間を惨殺して

平成5年10月26日逮捕された「殺人鬼フジコ」と呼ばれた女性の

逮捕される前までの人生を綴っています。

家族を惨殺され、伯母に引き取られたフジコは、特にスポーツができるわけでも、学力が高いわけでもないが、環境に対する適応性は高い子どもでした。

しかし、それは単に「適応能力が高い」というわけではなく

単純にその場しのぎの人格を演じるだけのことで、自分という芯がないため、演じた人格が上手くいかなくなると、どうしていいのか分からなくなるような人格でした。

でも、

自分というものしっかり持って、貫いて生きてる人が世の中いったいどのくらいいるのだろう?
とArimoは思います。

多かれ少なかれ、協調性を重んじ、シチュエーションによって自分自身を多少演じ分けている人が
大半なんじゃないだろうかねぇ?
「貫く」人生もまた、非常に「生きにくさ」を感じざるを得ないし。


だから

 ダメンズの代表格のような「裕也」に異常な執着をしているところも
 
 子どもを虐待していることも
 
 整形を繰り返すのも
 
 お金がないのに、浪費を繰り返すことも

フジコという特別な女の性質のせいというだけではなく、
その性質は私たち1人1人の中にも
小さいながら持っているものであって

「自分は絶対にこんな事にならない」

と言い切れない不確かさが、

この小説の一番恐ろしいところであり、惹き付けて離さない魅力なのだとArimoは思います。

親に愛されなかった子どもは、「愛される」こと自体を理解していないため、
愛されてもいない相手に、少し優しくされただけで異常な執着を覚えたり、
自分も他人の愛し方が分からず、本当の意味での他者とのつながりを確立できない。
気持ちは増幅し、エスカレートし、孤独の淵から殺人を犯すに至った。。

確かにそうなのだけど、この小説はそういう事を描いてるのではなく、
誰もが少なからず持っている嫉妬心や虚栄心、自己顕示欲、承認欲求を
白昼の下に引きずり出して、
これでもか!と私たちに見せつける。

普段は、嫉妬とは無縁ですよという涼しい顔をして生きている私たちの
横っ面をひっぱたいて、

本当はこれ、お前のことだろう?
と言われている気がする。

本当の恐怖とは、

宇宙のどこかにいるかもしれないエイリアンに侵略されることでも



氏名:プレデターさん
コメント:夏休みなので、人間狩りに来てます








夢の中に出てきて、マジ殺ししようとする火傷のおっさんでもなく



氏名:フレディ―さん
 コメント:悪い奴なので火あぶりにされました。悔しいので復讐してます。





うっかりすると自分が犯してしまうかもしれないというものの方が

ずっと怖いと感じてしまうのではないかと思う。


だからこそ、この異常なほどの嫌悪感と恐怖を感じながらも、

この著者の他の作品も読んでみたいと強く願ってしまうのでしょう。


以上。Arimo的くさや小説の感想を終わります。


☆今日のおまけ☆

もちろん、「殺人鬼フジコの衝動」は白百合女子大学図書館で借りれます。

さあ、本日も図書館に行きましょう!!




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